1on1の準備に30分、フィードバックに1時間——Claude Codeで「人を育てる時間」を取り戻す

はじめに

EMとして「本来やるべきこと」を問われたら、メンバーとの1on1やキャリア支援と答える人は多い。でも現実には、1on1前のノート確認やアジェンダ作成に15〜30分とられ、フィードバック文章をゼロから書くのにさらに時間がかかる。

これは判断に時間がかかっているわけではない。情報収集・整理・構造化の部分で時間を消耗している。Claude Codeが最も得意とする領域だ。

この記事では、1on1準備の自動化、根拠ベースのフィードバック設計、スキルギャップ分析、そしてチームメンバーのキャリア情報をセッションをまたいで保持するノートシステムまでを扱う。コードを書く道具から、人を育てる道具へ。


1on1の「準備コスト」をClaudeに任せる

1on1前の準備で時間を食う作業は大体決まっている。前回ノートを確認し、その人の直近のタスク状況を把握し、今日話すべきアジェンダを考える。毎回同じ構造なのに、毎回時間がかかる。

MentorCruiseのEmma Brillhartが実践しているのは、Claude CodeとObsidianボールトを組み合わせて、この準備を自動化するシステムだ。プロンプトの例はこう書ける。

1on1の前に以下を収集してアジェンダ案を作成して:

- Linearから[名前]の直近2週間の活動(完了・進行中・ブロック中) - 前回の1on1ノート(/notes/1on1/[名前].md) - 関連するSlackスレッド(PRレビューコメント・インシデント対応)

アジェンダは「業務進捗確認(5分)→ブロッカー共有(10分)→ キャリア・成長のトピック(10分)→次のアクションアイテム(5分)」の 構成でドラフトして。ステータス報告ではなく、本質的な対話に使える 問いかけを各セクションに1〜2問入れて。

「ステータス報告会」になりがちな1on1が、問いかけから始まる対話の場になる。準備の手間が減るだけでなく、「何を聞くか」から「どう深掘りするか」に集中できるようになる。

MCPMarketには1:1-prep スキルがマネージャー向けとエンジニア向けの両方で公開されており、過去ノートからの継続議題引き継ぎ、キャリア成長フレームワークに沿ったアジェンダ生成などを自動化できる。MCPMarketからインストールして試せる。

ただし注意点が一つある。Emma Brillhart自身も指摘しているが、Claudeが参照する日付を誤ることがある。出力は必ず確認してから会議に臨んでほしい。


根拠のあるフィードバックをClaude Codeで設計する

「もっと積極的にコミュニケーションを取ってほしい」というフィードバックを受け取ったエンジニアは、何をすればいいか分からない。抽象的なフィードバックはEMの評価を伝えているだけで、行動の変化を促せない。

Claude Codeを使うと、コードベースや活動履歴を根拠にしたSBI(Situation / Behavior / Impact)形式のフィードバックを設計できる。

[エンジニア名]の直近3ヶ月のパフォーマンスについて、

以下の観点でSBI形式のフィードバックを作成して。

入力情報: - PRレビューコメント: [抜粋] - スプリント振り返りでのコメント: [抜粋] - インシデント対応記録: [抜粋]

評価軸: 1. 技術的アウトプットの質 2. チームへの影響(コードレビュー・ナレッジ共有) 3. 自律性(ブロッカーへの対処、判断の質) 4. コミュニケーション(PR説明・ドキュメント)

「良かった点」と「成長機会」をそれぞれ2〜3点。 抽象的な評価ではなく、具体的な出来事・数値・言動を根拠に使うこと。

「もっと積極的に」が「XプロジェクトのPR #123でレビュアーへの返答が2日後になったことがあった。即日返答できると設計判断が速まる」という具体的な指摘に変わる。EMの主観ではなく、コードベースや履歴という客観的証跡を根拠にできるため、エンジニア側も受け入れやすい。

入力するデータ(PRコメントや振り返りのコメント)自体に偏りがあれば出力も偏るため、多面的な情報を意識して渡すことが大事だ。Claudeはフィードバックの素材を構造化する道具であり、評価の最終判断はEMが行う。


スキルギャップ分析とキャリア計画の構造化

「この人に何が足りないか」を構造的に把握できていないと、キャリア支援が「頑張ってください」以上になりにくい。Blockchain Councilが紹介している3ステップアプローチは、Claudeをキャリアコーチとして使う実践的な方法だ。

ロールフィットスコアカードを作るところから始める。

[エンジニア名]の次のキャリアステップ(シニアエンジニア)に向けた

スコアカードを作成して。

現在の証拠: - 担当プロジェクト・担当領域: [概要] - 発揮しているスキル: [リスト]

評価軸は「コアスキル / 隣接スキル / すでにある証拠 / 不足している証拠 / 30-60-90日計画」の5列で。

スキルは3つのカテゴリで分類する。具体的な成果物で証明できる「実証済み」、経験はあるが継続的には発揮できていない「部分的」、経験がなく次のステップに必要な「未証明」——この分類があると、「何から取り組むか」の優先順位が見えてくる。

ギャップが見えたら、それを埋める3ヶ月の学習ロードマップを作らせる。OJTと自己学習の組み合わせと、各月の「完了条件」まで具体化してもらうことで、曖昧な「頑張る」計画にならない。

EMとしてもう一つ有効なのが、このプロセスをエンジニア自身に渡すことだ。1on1でエンジニアに「Claudeと自分のキャリアについて対話したことはあるか」と聞いてみる。ない場合、次のようなプロンプトテンプレートを渡すだけで、エンジニア自身が自走するキャリア設計を始められる。

私のキャリアについて一緒に考えてほしい。

現在のロール・スキル・これまでの実績を共有するので、 以下を助けてほしい: 1. 私の市場価値の客観的な評価 2. 次のステップに向けたスキルギャップ 3. 6ヶ月で達成できる具体的なアクションプラン

証拠に基づいた分析をしてほしい。主観的な応援ではなく、 採用担当者が実際に評価するポイントで評価してください。

ここで一つ補足しておくと、TechCrunchとAnthropicの調査によるとClaudeを6ヶ月以上使い込んだユーザーはそうでないユーザーよりタスク成功率が10%高いという報告がある。エンジニアがClaude Codeを使いこなせるよう支援することは、個人のキャリア開発と組織の生産性向上の両方に直結する。EMがキャリア支援の文脈でClaude活用を促す意義はここにもある。


CLAUDE.md × ノートシステムで「忘れないEM」を実現する

「この人に最後にフィードバックしたのはいつだったっけ」「前回の1on1で何を約束したか」——これを記憶に頼っているうちは、昇進判断や評価面談のたびに証跡の整理から始めることになる。

Emma Brillhartが実践しているシステムでは、CLAUDE.mdにチームメンバー管理ルールを定義することで、セッションをまたいで文脈を保持する。

# CLAUDE.md(チーム管理セクション)

<h2>1on1管理ルール</h2> - notes/1on1/[名前].md に各1on1のサマリーとアクションアイテムを記録 - 1on1準備時は必ず前回ノートと直近2週間のLinear活動を参照 - アクションアイテムのステータスを毎回冒頭で確認すること

<h2>フィードバックログ</h2> - feedback/[名前].md に四半期ごとのフィードバックを蓄積 - SBI形式で記録し、ポジティブと成長機会の両方を必ず含める

この構造を作っておくと、昇進を検討するタイミングで「証跡の整理」に時間をかけなくて済む。チームメンバーごとの成長軌跡が一箇所に蓄積されており、評価面談の準備がファイルを読むだけで完結する。

ただし、評価データをClaude Codeに渡す際は社内のプライバシーポリシーや規約の確認が必要だ。エンジニアの個人情報・評価情報の取り扱いには慎重さが要る。


まとめ

EMが「人を育てること」に使える時間は、準備作業を効率化することで作れる。

次の1on1前に、Linear活動と前回ノートを参照するアジェンダ生成プロンプトを一度試してみてほしい。直近の評価対象メンバーのPRコメントを集めてSBIフィードバックを設計させると、フィードバック準備の感覚が変わる。CLAUDE.mdにノートファイルを登録すれば、次の1on1からシステムが走り始める。

準備の時間を取り戻すことで、対話の質が変わる。

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